「はじめてクッキング」教室が育む、"できた!"の瞬間

「はじめてクッキング」教室が育む、"できた!"の瞬間

包丁を握る小さな手、広がるカレーの香り、「できた!」という歓声。

ハウス食品グループが1996年から続けている「はじめてクッキング」教室は、 "自分で作って食べる"体験を通して、子どもたちに食べることの楽しさと大切さを伝える取り組みです。その根底には、「すべての人が生涯を通じて健やかに笑顔で暮らせる社会を、食の力でつくりたい」という、ハウス食品グループの願いがあります。

今回お話を伺うのは、長年にわたって「はじめてクッキング」教室に賛同してくださっている、京都の「おおやけこども園」の山手重信園長先生と、保育教諭の竹村夏希先生。実は、竹村先生も幼い頃に「はじめてクッキング」教室を体験したひとりだそうです。子ども時代の食体験は、どのように心に残り、未来へとつながっていくのでしょうか。

そして、園として「はじめてクッキング」教室を続ける意義とは。ハウス食品グループが応援する“食”に関わる活動の価値を、山手園長先生・竹村先生と一緒に見つめていきたいと思います。

「はじめてクッキング」教室とは?

ハウス食品グループが1996年から30年にわたり実施しているクッキング教室。全国の幼稚園・保育所・認定こども園に『バーモントカレー』などの製品をお届けし、子どもたちが先生とともに自分の手でカレーを作る体験に挑戦するプログラムです。包丁を握る、野菜を切る、鍋をかき混ぜる、そんな“はじめての一歩”を、これまでに延べ約1135万人の子どもたちが踏みだしてきました。

おおやけこども園 山手 重信(やまて しげのぶ)

おおやけこども園 山手 重信(やまて しげのぶ)

社会福祉法人大宅福祉会の理事長。父である先代が1969年に開園した「おおやけ保育園(現・おおやけこども園)」の園長を兼任。さらに、全国認定こども園協会京都府支部の支部長や京都市児童館学童連盟の顧問などを務めながら、休日は園が所有する農園で作物の手入れをしつつ、摘んできた花を園の玄関や各部屋に飾ることが楽しみ。

おおやけこども園 竹村 夏希(たけむら なつき)

おおやけこども園 竹村 夏希(たけむら なつき)

自身が園児として通っていた「おおやけこども園」(園児として在籍していた当時は「大宅保育園」)に、2005年から保育教諭として在籍。結婚を機に一時退職したのち、2023年に同園へ復職、現在は5歳児クラスの担任を務める。プライベートでは二児の母でもあり、子どもたちもまた同園に通う。一緒に過ごす時間は絵本や図鑑を読むことが多く、子どもたちは園の農園体験をきっかけに植物図鑑に興味をもつようになったそう。

30年、変わらず届けたかった"本物の体験"

30年、変わらず届けたかった“本物の体験”

――まず、「おおやけこども園」について教えてください。保育と教育の現場で、大切にされているのはどんなことですか?

山手:ポジティブな言葉がけによって自己肯定感を育み、子どもたちにとっての"ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態)"の土壌を整えていくことを大切にしています。そのためにはもちろん、先生たち自身の"ウェルビーイング"の向上も欠かせません。園では先生たちを中心に、地域とも連携して、子どもたちと向き合い、そして寄り添いながら、様々な活動に取り組んでいます。その土台となっているのが、農園での活動です。先代から受け継いだ農園で作物を育てる体験は、園の保育理念である「本物のヒト・モノ・コトとふれあえる」の一環です。私自身も、休日に農園に出て草を引き、咲いた花を月曜の朝に園の玄関や各部屋へ生けるのが楽しみで。作物が育ち、食材として料理に使うまでを子どもたちと一緒に体験することで、人や自然への感謝の気持ちが自然と身についていくのだと感じています。

――食に関わる活動では、どのような点を重視して取り組んでいらっしゃいますか?

山手:子どもたちにとって、食べることは"心を育てること"につながる大切な営みだと考えています。園では、食を通して、命をいただいていることへの気づきや、作ってくださる方への感謝、旬や自然を肌で感じること、みんなで一緒に食べる楽しさ、そして「おいしいね」と気持ちを共有する温かさ、これら5つの要素に重点をおいて育んでいます。本物の食材に触れ、匂いを感じ、音を聞き、五感を使って体験することを重視するとともに、保護者の方々の食への不安や悩みにも寄り添いながら、園と家庭が伴走するかたちで子どもの成長を支える環境づくりを意識しています。

30年、変わらず届けたかった“本物の体験”

――「はじめてクッキング」教室を1996年のスタートから続けられていると伺いました。最初に、このプログラムを取り入れたのはどんな想いからだったのでしょうか?

山手:2026年で、もう30年目の参加となります。最初に参加を決めたのは、子どもたちに"本物の体験"を届けたいという想いからです。自分たちの手でカレーを作り、みんなで食べる体験は、きっと子どもたちの心に深く刻まれるはずだと。しかも、いつも食べているカレーが、食材を育てる人や料理をする人など、たくさんの人たちのおかげで作られていることを知る、またとない機会にもなります。食べることへの興味の入り口として、これほどすばらしい活動はないと感じ、毎年続けさせていただいています。

――30年間続けてこられたなかで、気をつけていること、また、印象に残っている場面があれば、ぜひ教えてください。

山手:そうですね、「はじめてクッキング」教室では包丁やガスコンロを使いますから、実施するにあたっては職員同士で何度も会議を重ね、点検とチェックを繰り返して、子どもたちの安全を第一に準備を進めています。開催当日、子どもたちは、もう自然にこぼれ出てくるような笑顔でしてね。改めて、子どもたちの笑顔に力をもらいました。「はじめてクッキング」教室を通じて印象に残っているのは、好き嫌いで食べられなかった野菜でも、自分で作ったカレーになると、みんなと一緒にぺろりと食べてしまうということですね。カレークッキングには、子どもにとって"魔法のような"力があるのだなと感じました。

――「はじめてクッキング」教室を続けてきてよかったと思われる瞬間はどんなときですか?

山手:やはり、子どもたちのあふれる笑顔を見たときですね。目を輝かせて、包丁で玉ねぎを切ったり、じゃがいもの皮をむいたり、目標に向かって熱中する姿には毎回感動させられます。そして、その笑顔は先生たちのやりがいや働きがいになっていくんですね。子どもと先生の笑顔が響き合うという、その循環こそが、何よりの財産だと思っています。

あの日の楽しさを、子どもたちに手渡す番に

あの日の楽しさを、子どもたちに手渡す番に

――竹村先生は、園児の頃にご自身も「はじめてクッキング」教室を体験されたと伺いました。

竹村:そうなんです。もう30年も前のことなのですが、農園で野菜を収穫したり、園庭でみんなと一緒にご飯を食べたりといった楽しい思い出が今も心に残っています。
実は母に「私、園児の頃にどんなことをしていたか覚えている?」と尋ねたところ、"食"に関わるいろいろな経験をさせてもらえることに惹かれて、この園を選んだのだと話してくれました。30年以上前に母が魅力を感じた"食"に対しての園への姿勢が、今も変わらず続いている。その一貫性のなかで、自分の子どもたちまで通わせられていることを思うと、不思議なご縁を感じます。それに、かつて友達と並んで座った同じ園庭で、今は子どもたちがカレーをうれしそうに食べている。その姿を見ると、不思議な気持ちになります。自分がもらった楽しさを、今度は手渡す側にいるのだなと。

あの日の楽しさを、子どもたちに手渡す番に

――園には竹村先生のお子さんたちも通われているとのことですが、母として、保育教諭として、"食"に関わる活動に取り組む際には、どのようなことを意識されていますか?

竹村:独身で保育に関わっていた頃と、母になって復帰してからとでは、食への意識がずいぶん変わったなと感じています。「はじめてクッキング」教室をきっかけに、息子が「家でも料理をしてみたい!」という気持ちが芽生えたようなので、そのやる気は受け止めたいですね。スーパーへ買い物に行っても、以前ならパパッと買い物を済ませていたところを、「じゃがいもは園でも育てているよね」とか、「カレーで使ったのは黄玉ねぎだけど、玉ねぎには他にもいろいろな種類があるんだよ」とか話すようにしています。食についてのことではないですが、園の玄関にはいつもお花が飾られているんです。それを見た息子が「これ何のお花かな?」と興味を持つようになって、誕生日に「植物図鑑がほしい」と言うので買ってあげました。園での体験が、家での会話や“知りたい”の芽につながっているのを感じます。

――園では、収穫の前にも工夫をされているとか。

竹村:はい。たとえば、農園へ収穫に行く前に、ただ「収穫に行くよ」と連れていくのではなく、「玉ねぎって、どんなふうにできるのかな?」と事前に語りかけるようにしています。そうした声かけをすることで、収穫する際の気づきの機会を増やし、その小さな発見が、家庭での会話のきっかけにもなればと思っています。

――そうした活動を通して、子どもたちにどんなことを感じてもらいたいと考えていますか?

竹村:カレーを作るにも、食材を洗って、切って、煮込んで……という、たくさんの作業があると知ることで、給食を作ってくれる方や、野菜を作ってくれる方たち、そして家で毎日ご飯を作ってくれるお父さんお母さんへの「ありがとう」につながればいいなと思っています。そしてやっぱり、それをきっかけに、苦手な野菜にもちょっと挑戦してみよう、という気持ちが芽生えてくれたらうれしいですね。

"自分でできた!"が、明日の一歩になる

“自分でできた!”が、明日の一歩になる

――子どもたちが「はじめてクッキング」教室に取り組む姿を見て、改めて気づいたことはありますか?

竹村:そうですね。こうした"はじめて"の経験は、子どもたちにとって本当にワクワクすることなんだなと実感しました。自分たちで作って食べるという機会も、子どもたちには特別なことなので、給食で食べ慣れているカレーだとしても、自分たちで作ったカレーは、いつもよりずっと食べる量が多くて(笑)。そんな姿を見ると、クッキングに限らず、日々の保育に関しても、“はじめて”のワクワクを取り入れていくことの大切さを感じます。

――はじめてのクッキング体験でワクワクしている子どもたちについて、印象に残っているエピソードを教えてください。

竹村:これは発見だったのですが、私たちが思う以上に、子どもたちが自分たちでやれることはたくさんあるんです。「僕がやりたい!」「私もやりたい!」と取り合いになるかな、と少し心配していたのですが、グループで役割を決めると、「次は◯◯ちゃんだよ」と自分たちで順番に声をかけあって進めていました。それから、普段はあまりお話をしに来ない子が、「はじめてクッキング」教室の翌日に「ちゃんと、おうちでお手伝いしたよ」と報告に来てくれたんです。家でも “はじめて”を思い出して実践してくれたことが、すごくうれしかったですね。

“自分でできた!”が、明日の一歩になる

――子どもたちが苦手な食材や新しい味に挑戦する姿をどう受け止めていますか?

竹村:「はじめてクッキング」教室では、みんな楽しそうで、笑顔があふれています。いつもは少食な子も、みんなで作ったカレーはきれいに完食していて、びっくりしました!給食でも、農園で採れた玉ねぎを子どもたちが皮むきをすることもあるのですが、「これ、自分がやったやつだから食べよう」と、ひと手間関わるだけで気持ちがガラッと変わるんです。「自分が育てたから」「友だちも食べているから」という動機が、「食べてみよう」の後押しになっているようです。なかには家でもカレー作りに挑戦して3日連続カレーだったというお子さんもいましたよ(笑)。

――園での体験が家庭につながっているのは、うれしいことですね。

山手:本当に、そうですね。この体験がきっかけで、親子のコミュニケーションが深まったという声が、保護者の方々からも届いています。「自分でできた!」という経験は、子どもたちにとって大きな自信になっているのだと思います。園での体験が、家庭での温かい親子の時間につながっていることも、この活動の大きな価値だと感じています。

“自分でできた!”が、明日の一歩になる

竹村:私の息子も「はじめてクッキング」教室の活動をきっかけに、家でも進んでお手伝いをしてくれるようになりました。自分で調理に関わることで、苦手だった野菜も食べられるようになって。親子の時間を深めるすてきなきっかけになったなと、母としても、とてもありがたく思っています。

時代は変わっても、伝えたい想いは変わらない

時代は変わっても、伝えたい想いは変わらない

――「はじめてクッキング」教室がスタートした30年前に比べて、共働き世帯の増加などで、子どもたちの食環境は大きく変わったと思います。山手園長先生は、この変化についてどのように感じていらっしゃいますか?

山手:昔はどの家庭でも、まな板で野菜を切るトントンという音、鍋でグツグツと食材を煮る音、あるいはもくもくと立ち上る湯気など、そういったものを家庭でも五感で感じられました。それが今の時代、感じる機会はたしかに少なくなっていますよね。だからこそ「はじめてクッキング」教室で、調理の音や食材の手触り、色や形の変化などを感じてもらいたい。料理は、手間と時間をかけて完成させるからこそ、大きな達成感を得られますし、食べたときには幸福感に満たされるものです。コストパフォーマンスばかりが語られる時代ですが、その手間の先にある喜びを一度味わった子は、大人になっても料理に違和感なく向き合えるはずだと思っています。そしていつか親になったとき、今度は自分の子へと手渡していく。そうやって受け継がれていくものこそ、大切にしたいと思っています。

――では、30年前から変わらないこととはどんなことでしょうか?

山手:「はじめてクッキング」教室を体験するたびに、子どもたちが大きく成長していると感じられるということですね。そして体験をきっかけとして、日々の暮らしのなかでの食への関心が広がっていく姿を見ると、継続する大切さを実感します。「食べるって楽しい!」「自分でできた!」という喜びや自信を育みたい、という想いは30年前から変わっていません。
そしてもうひとつ、伝えていきたいのが"もったいない"の心です。かつてケニアの環境保護活動家で、ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさんが世界に広めたこの言葉を、飽食の時代だからこそ、改めて子どもたちには感じてほしいと思っています。昔は家庭で、おじいさんおばあさんが「お米を一粒でも残したらいけないよ」と教えてくれましたが、今はそうした場面も少なくなりました。むずかしい言葉を使わなくても、自分で作って、残さずいただく。そうした日々の体験を通じて、自然とSDGsにもつながっていけばと願っています。

時代は変わっても、伝えたい想いは変わらない

子どもたちの"はじめて"をこれからも支えていく

子どもたちの“はじめて”をこれからも支えていく

――先生方のお話を伺って、子どもたちにとっての"はじめて"の経験の大切さを改めて実感しました。

山手:そうですね、とても大切なことだと思っています。どんなことでも"はじめて"は、不安になったり、ちょっと臆病になったりしがちです。だからこそ、それをバネにして、知恵を絞ったり、周りと協力することで達成感も大きくなるのだと思います。子どもたちには、そうしたチャレンジ精神を忘れずにいてほしいですね。

――最後に、この「はじめてクッキング」教室についての想いを教えてください。

竹村:私が小さい頃に経験したことを、30年という月日が経って、今度は自分の息子と一緒に体験して、楽しかった気持ちをつなげられているということが、やはりすごくうれしいです。今の時代は、園と密に連絡を取り合うのが難しいご家庭も増えています。そんななかで、保護者の方が家での子どもの様子を教えてくださるなど、「はじめてクッキング」教室が、園と家庭をつなぐきっかけになっていると実感しています。これからも、保育教諭として、母として、子どもたちの“はじめて”を大切にしていきたいです。

山手:「はじめてクッキング」教室を通じて、子どもたちの“おいしい”の笑顔が地域へ広がり、みんなのウェルビーイングにつながることを願っています。便利な時代になったからこそ、食を通して人とつながること、誰かと一緒に食べること、そして感謝していただくことの価値は、より高まっていると感じています。私たちは、この活動を通して、“食べることを楽しめる子”、“人への感謝をもてる子”、“自分でやってみようと思える子”、そして“心も身体も豊かに育つ子”を育んでいきたいと考えています。子どもたちの笑顔が、家庭や地域全体の幸せへと広がっていく未来を思い描いています。

子どもたちの“はじめて”をこれからも支えていく

取材を終えて見えてきたのは、「はじめてクッキング」教室が単なる一日限りのイベントではない、ということでした。子どもにとっては「自分でできた!」という小さくもたしかな成功体験。その感覚は、何年も、ときには何十年も心に残り、竹村先生のように、いつか誰かに手渡す側へとつながっていきます。

「すべての人が生涯を通じて健やかに笑顔で暮らせる社会を」。ハウス食品グループが掲げてきたこの言葉が、「はじめてクッキング」教室を通じて、子どもたちの教育・保育の現場にたしかに息づいていました。

子どもたちのそばで日々を見守る、おおやけこども園の先生たち。そして、全国の子どもたちへ"はじめての一歩"を届けつづける、ハウス食品グループ。立場は違っても、その根っこにあるのは、"子どもたちの未来のために"という共通の想いでした。

子どもたちが「はじめてクッキング」教室を体験している様子や、おうちで子どもと一緒に簡単にクッキングができるレシピをnoteでご紹介しています!

【note】「はじめてクッキング」教室が育む、"できた!"の瞬間

おおやけこども園の山手園長先生たちが登場する「はじめてクッキング」教室のCMができました!
「はじめてクッキング」教室30年の想いをぜひご覧になってください。

取材日:2026年6月
内容、所属等は取材時のものです

▶はじめてクッキング教室
▶おおやけこども園

文:吉田けい
写真:佐久間秀樹
編集:株式会社アーク・コミュニケーションズ

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