グローバルな
バリューチェーン構築に向け
積極的に提言し、
変革へともに歩んでまいります
岡島:私は、公務員として公正・中立に説明責任を果たしてきたことや、透明性を重視して取り組んできた経験を生かし、当社の社外取締役として執行から独立した立場で経営の監督を行っています。そして、農林水産省で食の安全・安心といった消費者行政や農産物の流通行政を担当し、また、内閣府男女共同参画局長を務めていたことから、当社グループのバリューチェーン(以下、VC)経営への変革やダイバーシティの推進に向けて貢献していきたいと考えています。
川嵜:2024年6月に、当社の社外取締役(監査等委員)に就任しました。私はこれまで長年にわたり、銀行や証券会社で主に人事、海外業務に携わってきた経験を生かし、ガバナンスや人的資本経営の強化、グローバル展開、資本政策や成長戦略の推進に向けて積極的に提言し、当社グループの企業価値向上に努めてまいります。
岡島:当社は真面目な社員が多く、製品の安全・安心や品質をとても大事にしていて、一つひとつ詳細に計画を立て、検証しながら丁寧に取組を進めていく企業文化が特長です。一方で、それゆえにスピード感に欠けることを課題に感じていました。ただ、私は当社の社外取締役に就任して5年になりますが、この1年で大きく変わってきた印象を受けています。第八次中期計画(以下、八次中計)においてグローバルなVCの構築に向けて少しずつ成果が出てきたこと、また1on1ミーティングをはじめとした対話の積み重ねや経営陣による社内説明会などを通じて会社の方針が浸透してきたことにより、社員の意識も変化してきているのだと思います。
川嵜:当社に対しては、「バーモントカレー」に代表されるようにブランド力が高く、商品の打ち出しが得意でアピール上手な会社というイメージを持っていましたが、社外取締役に就任してからは、実直で、一つひとつのことを着実に行う会社だと思いました。社外取締役の意見に対しても、真摯に向き合っていただいています。ただ、岡島さんも言われたように、物事に対して丁寧に取り組む一方で意思決定のスピード感やダイナミックさはもう少しあったほうがよいと感じます。
岡島:取締役会は、私が就任した当時は監査役会設置会社で、社外取締役は2名でした。2021年に監査等委員会設置会社に移行し、社外取締役は4名となり、現在に至ります。取締役会は自由に発言できる雰囲気で、近年はより一層様々な意見が出てくるようになり、活発な議論が行われています。取締役会の実効性評価は2023年3月期より開始し、これまでに3回実施しています。調査は外部に委託せず、社内でアンケートの作成から調査・分析、課題の抽出を行い、PDCAサイクルを着実に回して常に改善に取り組みながら実効性の向上が図られています。これまでにも、課題を踏まえ、双方向の意見交換を通じた議論の時間が増えたことや、実質的な審議時間が確保されるようになったことなど改善が見られます。
川嵜:私は以前に在籍した会社で取締役会議長を務めていた時に、外部による実効性評価を検討したのですが、やはり外部による調査の場合、客観的な第三者の視点が入る一方で各議題の内容に深く入り込んで検証することは困難です。当社の取締役会実効性評価は、オリジナリティがあり、実効性が高い形で丁寧に評価されていると思います。取締役会での議論を一件一件振り返り、十分に審議することができたか、もしできていないのであればなぜかということを確認しており、これを最初に見た時は、ここまで深く掘り下げるのかと驚きました。実際に、もっとディスカッションしたほうがよかった案件がある際は、言い足りていなかった意見をあらためて述べる機会が設けられ、意見交換することで議論をさらに深めることができる“敗者復活戦”のようなものとなっています。これは、当社が質の高いコーポレート・ガバナンスを実行している一つの例だと思います。
岡島:経済産業省より取締役会の事務局機能の強化について提起されましたが、取締役会実効性評価のアンケートの作成や調査を含め、当社では取締役会事務局が非常に努力されていると思います。私が社外と社内の意見交換の場をもっと増やしたほうがよいと提言した際には、取締役会事務局の方が他社の事例などを調べてくださり、それをもとに検討を進めていただきました。
また、2025年3月期においては、コーポレート・ガバナンスをテーマにした投資家の皆様とのスモールミーティングを行う機会があり、様々なご質問やご意見をいただき、投資家の皆様の目線をよく理解することができ、大変勉強になりました。そのなかで強く感じたのは、時間軸の違いです。当社のようなものづくり企業では、投資を決定・実行してから利益が出るまで5~6年かかるというのが実情ですが、投資家の皆様は2~3年という時間軸をお持ちです。こうしたギャップの解消に向けて、今後も一層対話を進め、そして投資家の皆様の視点を大切にして取締役会で議論しいくことが重要であると考えています。
川嵜:先日の取締役会でも、IR管掌の取締役より、アナリスト・投資家の皆様からいただいた意見についてフィードバックがあり、成長戦略をより明確に打ち出してほしいといった要望など、当社の課題についてストレートに報告されていました。いずれも取締役会で議論を重ねている課題であり、明確に答えを出していくことが重要であるという認識を取締役会および執行サイドと共有しています。
岡島:八次中計は、「ダイバーシティを力に変える」をテーマとして、多様性を企業価値向上につなげていくことに注力しています。これまで、ダイバーシティの実現に向けて、人事制度の改善・改革、研修の強化など社員の意識を変えるための取組を進めてきましたが、それを一挙に力に変えようというフェーズです。先日、ハウス食品営業本部首都圏支社の現場を訪問した際に、「これまでは営業一人ひとりがお客様を訪問するスタイルだったが、チーム制の営業体制を取り入れた改革が始まっている」ことを聞き、変化を目の当たりにしました。お客様との交渉、企画、データ分析など、様々な役割があるなかで、一人ひとりの能力や要望に応じて人材を配置していく、まさに「ダイバーシティを力に変える」ことを実践されていると感じました。グループ内にも管理職を務める女性が増え、外国籍の方が活躍する姿も見えるようになってきており、また、社員が自分の選択によってキャリアアップできるような制度も整備されています。必要なのは、これまでに取り組んできた各施策をさらに推進していくことです。
川嵜:当社の時価総額は現在約2,600億円でPBRも1倍を下回る状況(2025年3月末時点)ですが、当社の実力はこんなものではないと考えています。今後、企業価値をより高めていくにあたっては、メリハリをつけることが重要です。投資家の皆様からは成長戦略をより明確に打ち出すべきではないかというご意見をいただいており、そのことは私も取締役会で提言したことがあります。自分が執行サイドにいた時の経験を踏まえると、成長分野とそれ以外を明確化し、メリハリをつけないと総花的になってしまいます。現在投じているリソースが本当に必要な事業領域か検証し、対応することも重要であり、今後の成長に向けては、スピード感やメリハリのある意思決定を行っていく必要があります。VC構想のもと、方向性が見えてきた段階である今だからこそ、優先順位をつけて進めていかなければいけません。一方で、成長分野をいったん特定したら、必ずしも思ったとおりに進まない場合でも覚悟と確信を持って当初の目的達成に向けて実現力を発揮していくことも重要です。この成長戦略を見極めていくうえで私が重要だと常々話しているのが顧客起点です。当社は新しい価値を創造していく「クオリティ企業」をめざしており、それに対し「オポチュニティ企業」は時代や市場の環境変化を捉えていくとされていますが、お客様目線を持たなければ新たな価値創造につなげることは難しいと思うからです。真の意味での「クオリティ企業」をめざすには、それぞれのバリューチェーンのなかで常に顧客視点を持って、新たに成長させていく分野、事業領域、商品を考えていくことが必要ではないかと思います。
また、さらに我々は成長戦略の明確化を図る一方で、資本効率の向上という極めて重要な課題にも向き合わなければなりません。この面で、政策保有株式の縮減など資本政策は着実に進捗しています。加えて、当社ではすでに八次中計よりROICマネジメントを導入しています。ROICそのものをアジェンダとしてディスカッションするのは年に数回ですが、毎月の取締役会における個別の議題のなかで、八次中計、ROIC、VC経営といった大きなテーマについて議論しています。例えば先日、各事業の業績報告があった時には、これまでのレビューのやり方でよいのか、ROIC向上の検討につながるようにVC経営あるいは八次中計にリンクした形で発表すべきではないかといった議論が行われました。
ROIC経営を進めていくには、今後、事業単位ごとのROICの開示は避けては通れないと思います。それを実施するためには、グループ本社の経費を正しくセグメントごとに配賦できるように精度を高める必要があります。また現在は、5つの事業セグメントベースで開示していますが、VCベースでの開示に切り替えていくべきか決めなければなりません。例えば、米国事業は現状、海外食品事業の部門の一つですが、大豆系VCとして開示するとなればその準備を進める必要があります。さらなる企業価値向上に向けては、以上のように成長戦略と資本政策を状況に応じて適切にバランスをとりながら推進していくことが何よりも重要であり、今後もこのような視点で提言を行っていきます。
岡島:当社グループは今、大きな変革期を迎えていますが、このようななかでも、グループ理念「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」を軸に、食の大切さをしっかりと認識し、品質と安全を第一に取り組むことが重要です。ステークホルダーの皆様には、当社グループがグローバルなVCのもと、良い製品・サービスをお客様にお届けするとともに、社会の環境変化に対応した新たな価値を創造していくことに期待していただきたいと思います。
川嵜:当社は現在、次の成長に向けた様々な取組を実行しているフェーズにあり、今後、ハウス食品グループが変化・成長していく姿に注目してほしいと思います。当社グループは、さらなる発展を遂げるために、グローバルなVCの構築にチャレンジするとともに、乳酸菌などの機能性素材、農業などの新しい分野への取組を進め、試行錯誤を続けています。これまで長年にわたり築き上げてきたブランドや強み、真面目で真摯に取り組む姿勢・企業風土をもってすれば、ハウス食品グループの新しい成長フェーズを必ずご覧いただけると確信しています。できるだけ早期に実現すべく、執行サイドとしっかりタッグを組み、監督しながら、企業価値を高めていきたいと思います。