育児という“人生の経験”を力に!経験の多様性をバックアップする制度と想い

育児という“人生の経験”を力に!経験の多様性をバックアップする制度と想い

ハウス食品グループでは2016年以降、ダイバーシティ推進の取り組みの一環として“性別を問わない育児参画の実現”に積極的に取り組んできました。

この取り組みは、“食を通じて人とつながること”、そして、“社員一人ひとりもその価値を実感し、笑顔ある暮らしをともにつくる一員として更に成長して欲しい”というハウス食品グループの理念につながっています。

そのなかで、ハウス食品は男性の育児参画における課題に向き合い、独自の支援をおこなってきました。それにより男性社員の育児参画への意識向上や理解浸透が、男性育休取得者の数においても結果として表れてきています。

今回は、ご自身も育休取得をした経験がある人事総務部の西山さんに、ハウス食品の取り組みの背景や、ご自身の経験を通して見えた仕事と社会のつながりについてお話ししていただきました。

西山直人

西山直人(にしやまなおと)

2008年ハウス食品入社。営業職のキャリアを経て、2013年から人材部門に配属。採用・育成・ダイバーシティ推進における各種人事施策・制度運用等の業務に従事。育児休業中に「近所の公園」の存在の重要性と素晴らしさに気づき、エリアを拡げて様々なロケーションの公園を子どもと一緒に探索中。

男性育休取得の課題を乗り越えるために、共に考える

2010年代後半以降、行政主導の育児・介護休業法の改正や、それに伴う風土醸成を通して社会基盤の整備も進み、男性が育児に関わっていく気運は高まってきました。一方で、男性の育児休業取得に向けた動きはどの企業でも円滑に進展している訳ではなく、ハウス食品でも課題があったそうです。

「取り組み当初は、男性社員自身も、子どもの出生に伴って自分が育児休業の取得対象となることに対する当事者意識がまだまだ薄く、子どもの出生後にその報告が届くケースがほとんどでした。出生後の報告では、本人や在籍部署のまわりのメンバーも育児休業による業務代替を含めたフォロー体制が整えられないため、結果として配偶者の産後退院時に有給休暇を取得する、いわば局所的な家庭のサポートに留まっている傾向がありました」(西山)

男性育休取得の課題を乗り越えるために、共に考える

これらの実情を課題として捉え、ハウス食品の施策として整えたのが「育休取得対象者の早期察知体制」でした。女性はもちろんのこと、男性社員の“育休を取りたかったが、結果、取れなかった“という課題を無くしていくための取り組みです。

「仕組みとしては、QRコードを読み取った先のアンケートシステムにおいて、配偶者の妊娠が判明した際、出産予定日や育休取得の意思、育休取得希望期間などの必要事項を入力し、人事総務部へ本人から直接知らせることができるというものです。これによって男性社員も早いタイミングで自分自身の育休について考える機会となり、また、人事総務部や上司側も、育休取得への後押しや業務フォローや調整など早期から十分な時間を確保して準備が始められる状態になってきました」(西山)

この通知が人事総務部に届いた時点で、対象者とその上司に向けて育休取得の連絡や意向確認、そして対象者との面談という次のフローに連携できており、“育休を取りたい”という社員の希望から取得へのサポート体制が創られていきました。

男性育休取得の課題を乗り越えるために、共に考える

また、ハウス食品の育休面談は、当事者、上司、人事総務部担当者と3人でおこなう「3者面談」という独自のスタイルです。2者ではなく人事総務部を交えることにどのような意図があるのか西山さんにお聞きしました。

「育児休業法改正に伴い国の制度の複雑さが増しているなか、ハウス食品独自の制度も絡み、理解が難しい状況があります。当事者やその上司が制度への十分な理解をした上で最適な取得の仕方を選択できるよう、人事総務部を含めて3者で話し合えるような場を設けています。具体的には、本人の育休取得に際しての状況や希望を聞き、上司を交えて客観的に仕事の繁閑状況なども確認します。人事総務部からは『育休を一括で取得するのではなく分割して取得するパターンもある』という選択肢をお伝えして、一緒に最善策を考えたこともあります」(西山)

男性育休取得の課題を乗り越えるために、共に考える

ハウス食品では、1年のうち男女合わせて何十名も育休を取得するという状況があるなか、人事総務部では体制を整え個々人の育児参画のサポートを続けてきました。

社員の多様な育児参画に対応できるよう、3者面談のほかにも、人事総務部担当間での対応力向上に向けた学習機会を継続して設け、制度知識やケースに応じた有効な取得パターンについての理解向上を図る取り組みを進めてきました。社員の課題と希望に寄り添う人事総務部の姿勢が、3社面談や個々人のサポートなどの現場で活きていると思います。

育休から復職した後の働きやすさもサポート

男女問わない育休取得が進み、子育てしながら働く社員に対する両立支援も求められているなかで、ハウス食品は働き方変革の取り組みの一環として2018年から「月間計画勤務制度」を刷新しました。

月間計画勤務制度とは、5~22時の間で1日あたりの勤務時間を月初めに1ヶ月分自分で計画することができる制度です。コアタイムがないフレックスタイム勤務の状態に近く、各自の生活背景や状況に合わせて、柔軟な働き方を選択できます。仕事の内容や目的、個々人の状況・環境に合わせて柔軟に働くことが、ひいては生産性を上げることに直結するということを、会社としても、社員一人ひとりとしても共通認識として持てるよう取り組んでいると西山さんは言います。

育休から復職した後の働きやすさもサポート

「月間計画勤務制度の活用の仕方は、社員個々によって多様に拡がっています。育児・介護・通院等、家庭における生活リズムに合わせて、フレキシブルに働く社員はコロナ禍以前から存在していましたが、コロナ禍を経た今では、多様な働き方のより一層の浸透が見られます。根底には、多様な働き方をしつつも、個々の関わり合いのなかで生産性向上が実現できること、『社員一人ひとりを信じる』という会社の思いがあると感じます」(西山)

ハウス食品では、このような多様な働き方を含む「働きがい」の向上に向け、部署毎に全員参加型で対話する機会を毎年継続で実施しています。社員一人ひとりの前向きな貢献意欲を束ねて生産性を上げていくべく、日々関わり合いの変化の中でより最適な職場での一人ひとりの交わりを模索しながら、組織活性化を図っています。

社員を信頼しているからこそ、各々の状況に最適な働き方をしてもらい、良いパフォーマンスができるよう、社としてバックアップする制度が整っているといえます。

これらは両立支援の制度面である一方、自ら働き方を組み立て、いかに効率よく働いていくことができるかということを各々が考え、挑戦していく制度である、という自律的なイメージが重なりました。

子育てを通して見えた仕事と社会とのつながり

西山さんご自身も2021年以降2回の育児休業を取得しています。第一子は1週間、第二子は1ヶ月半の育休を取得、その経験を通じて変化が訪れました。

「第二子が生まれた際の育児休業では、私が上の子のケアに掛ける時間を多く過ごしました。日頃仕事へ向けている時間とエネルギーを、すべて家事育児に向けたことでたくさんの気づきがありました。1つは、子どもの世話をする上でそれまで見えていなかった妻の様々な配慮や細やかな行動に気づいたこと。次に、時間刻みで訪れる様々な家事育児の連続のなかで、いかに段取りよく対応するか、動線づくりも含めて試行錯誤する機会がグンと増えたことです。それは『日々の会社での仕事に近しい』という気づきを得ることにもつながりました」(西山)

子育てを通して見えた仕事と社会とのつながり

育休を取得した西山さんを奥様はどのように見ていたのでしょうか?という問いに西山さんは、はにかみながら答えてくれました。

「第二子の育児休業の最後に妻は『私自身が睡眠を取るための時間を十分に取ってくれて身体がしっかり回復できたこと』『下の子に向き合う時間をたくさん作れたこと』『育児への不安やイライラという負の感情よりも、子どもがかわいいと思える時間が増えて、心から安らげたこと』などを私に伝えてくれました」(西山)

子育てを通して見えた仕事と社会とのつながり

西山さんのこぼれる笑顔と共に「ケンカも多かったんですけどね」と照れ隠しのように言葉をつけ加えている姿が印象的でした。西山さんの奥様のメッセージからわかるのは、男性が育休を取ることは、配偶者の心身の健康状況や、ひいては家族の子育て環境に直接影響するということでした。

「育休期間中は、毎日の食事全般を担当したことを通して『食を通じて家庭の幸せに役立つ』ことを育児世帯の生活者として改めて芯から実感できたのも新鮮な気づきでした。頭ではもちろん十分理解しているつもりの企業理念が、当たり前のようでとても自分にとって親和性のある価値観であること、そのような会社に共感を覚えて入社したのだと初心を再認識しました。また、幼児向けの自社製品を調理するなかで、味覚だけでなく調理の工程でも、こんな工夫や趣向 を凝らしているんだということを調理者の立場から改めて発見したこともありました。自分の勤めている会社がお客さまの食生活や社会に提供している価値を、様々な角度から再認識できる機会となりました」(西山)

子育てを通して見えた仕事と社会とのつながり

この経験が、家族との共感や仕事への気づき、そして、消費者として改めて自社製品への理解など、西山さんの様々な知識のアップデートにつながっていることがうかがえました。

育休に入る前は事前のコミュニケーションに注力

職場における西山さんの育休取得までの経緯や、取得後どんな変化が起こったのかをお聞きしました。

「自身が不在であっても業務が回る体制を築くために、妻の妊娠判明から早い段階でシミュレーションを始めていました。年度初めの4月に目標設定や推進テーマを策定し具体的に取り組む業務が定まりますが、秋頃には育休を取ろうと考えていたこともあり、この頃から育休取得に向けて準備を整え始めました」(西山)

育休に入る前は事前のコミュニケーションに注力

西山さんは早くから育休取得の意思を周囲に伝え、育休で不在となる期間に想定される自所課の業務をすべて可視化し、引き継ぎする内容を整理しました。依頼することをTO DOにしてわかりやすく一覧し、依頼する社員ごとに業務ボリュームが明瞭になるよう、気をつけていたとのことです。また、部署を超えたメンバーにも影響がある旨も記載し、他部署の管理職にも報告と依頼をしていたとのこと。

「周囲の皆さんが快く育休に送り出してくれる…だからこそ関わる社内メンバーに依頼するためのコミュニケーションにも時間を費やしていました。引き継ぎを依頼する業務のなかには、様々なメンバーと横断的に関わり議論をしながら前に進めていく仕事もあります。担当社員には、5月という早いタイミングから議論の場に合流してもらい、他メンバーとのコミュニケーションを綿密にとれるようサポートもしていきました」(西山)

「復帰してみて驚いたのは、私の不在期間中、おもに仕事を引き継ぐ依頼をしていたメンバーの主体性がぐんと上がったと感じた点です。ひとりは『西山さんの代わりとしておこなう業務経験を通して、職場内での様々な人とのつながり・交わりが増えました。マネジメントの練習をしたかのように感じており、仕事の視野が拡がりました』と言ってくれました」(西山)

育休という不在期間があることによって、改めてその人が持つ仕事・業務内容が可視化されたり、部署内外のメンバーとの連携が強まったり、サポートするメンバーの成長の機会につながったり、組織においても前進する機会となっていたことがわかります。

経験の多様性を拡げ、すべての社員が働きやすい環境に

「ダイバーシティに関する取り組みが社としてスタートした当初は、性別や国籍など、おもに一人ひとりの『属性』の違いをどう織り交ぜて組織力に活かしていくか、という点にフォーカスしていました。推進していくなかで、そのような属性に限らず、どの社員においても、個々人が抱えている生活や背景、担っている業務の特徴や状態、これまでの社内外での経歴など、社員一人ひとりが違う経験をもっているということに向き合ってきました」(西山)

経験の多様性を拡げ、すべての社員が働きやすい環境に

ダイバーシティを推進してきた10年近くのなかで変化が生まれ、それはハウス食品それぞれの制度に反映されていることがわかります。ハウス食品には、先にご紹介した月間計画勤務制度に限らず、テレワーク制度や半日・時間単位有給休暇制度など柔軟な働き方を選択できる制度がいくつも設計されています。どの制度も育児・介護に関わる人たちの両立支援のみに存在しているのではありません。「一人ひとりが異なる環境、状況にある」ということを前提におき、すべての社員が働きやすい状況を自ら選択する-そのような個々を大切にするマインドが制度にあらわれています。

「個々人の経験の多様性を拡げることによって、そこで得られた知識や気づきは、仕事や会社につながり還元されていくものなのではないかと私自身も実感しています」(西山)

西山さんご自身が育児を通しての経験を仕事に活かしているからこそ、想いのこもった言葉として響きました。男性育休取得において「男性が育休を取れない理由、取らない理由は何か」という課題に向き合い、そこから独自の施策を創っていくプロセスがあったことは、まさに一人ひとりの想いや経験の多様性をバックアップする姿勢にほかなりません。

ハウス食品グループは、このような社員一人ひとりの想いや熱意、経験の多様性が、仕事や組織の進化につながっていくことを信じています。

取材日:2024年3月
内容、所属等は取材時のものです

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