子どもと食卓を囲めるのはあと何回?“限られた時間”を楽しむために私がしていること

子どもと食卓を囲めるのはあと何回?“限られた時間”を楽しむために私がしていること
Scroll Down

子どもと食卓を囲める時間は、思っているよりもずっと短いのかもしれません。 成長とともに、一緒に食べられる日が少しずつ減っていく――そう気づいたとき、 毎日の食事がいっそう愛おしく感じられます。 「限られた時間だからこそ、笑顔で過ごしたい」。 食生活アドバイザーであり一児の母でもある鎌上織愛さんは、忙しい日々の中で食卓を “心がつながる場所”に変える工夫を重ねてきました。 親子で過ごす何気ない一食が、未来の宝物になる。そんなヒントをお届けします。

親子で食卓を囲める生涯回数は?

子どもと一緒に過ごせる時間が、実はとても限られていることをご存じでしょうか。

関西大学社会学部の保田時男教授によると、親が子どもと過ごす生涯時間は、母親で約7年6ヶ月、父親はなんと約3年4ヶ月しかないそうです。

共働きが増加傾向の昨今では、家族で食事をする時間も貴重なものとなっています。

では、子どもと共に食卓を囲める生涯回数はどのくらいになるのでしょうか。
農林水産省のデータをもとにざっくり計算すると……、

約4,950回

計算方法▼
・農林水産省の令和4年度データによると、夕食を家族と食べる平均回数は、週に5.6回(※1)
・1年=約52週
・離乳食期を除いた2歳〜高校卒業(約17年間)

計算式: 週5.6回 × 52週 × 17年 = 約4,950回

約4,950回という数字だけを見ると「え、結構ある?」と思われるかもしれません。
しかし、人生で一緒に食卓を囲める期間を考えてみると印象が変わります。

冒頭でお伝えした生涯時間と同様に、実際に子どもと食卓で過ごす “食事の生涯時間” を計算してみました。たとえば、食事1回の時間を1時間と仮定して計算すると、生涯でわずか206日間(=約7か月)しか、家族みんなで食卓を囲む時間がないということになります。

私は、率直に「少ない」「あっという間」と感じて大きなショックを受けました。

毎日顔を合わせているはずなのに、人生全体で見ると、ほんのわずかな時間しか一緒にいられないのです。

毎日が忙しく過ぎていくなかで、一食一食をどう過ごすか。

少しでも心が軽くなったり、日々のヒントになったりすればいいなと思い、食生活アドバイザーとして、8歳の娘がいるひとりの母として、子どもとの食事時間についての考え・工夫したことなどをお届けします。

「共食」は食育と心の発達を育む時間

食生活アドバイザーの立場から最初に皆さんにお伝えしたいのは、幼少期に親と食卓を囲むことが「食の知識」や「栄養バランス」「食事マナー」などを自然に学ぶ大切な機会であるということ。

そしてそれは、心の安定やコミュニケーション能力の発達にもつながります。実際に「共食」が多い人は心身の健康状態が良く、語彙力やコミュニケーション力が高い傾向にあると、農林水産省やハーバード大学の調査結果でも報告されています。(※2)

しかし、子どもと一緒に食卓を囲みたいと思っても、共働き家庭の増加や核家族化によって時間の確保が難しい家庭が多いことも現実。私もたくさん悩みました。

“うまくいかない食卓” に悩んでいた私

食事を共にする回数だけでなく、一食を大切にしたいからこそ「食事が子どもにとって楽しい時間である」ことも重要だと考える保護者の方は多いのではないでしょうか。私も漏れなくそうした考えですが、実際には現実的な悩みがたくさんあります。

たとえばうちの子は偏食が激しく、好き嫌いが多い。

せっかく作った料理を残される虚しさは、忙しい日常のなかでとてもつらく感じました。

さらに、食べる量が少ない、食事中に手遊びをする、口に入れても咀嚼が足りず飲み込まないままボーっとしてしまうなど、食事に集中できないことも。

こぼす・汚す → 片付け → 私がイライラする……の悪循環は日常茶飯事。

「楽しい食卓にしたい」と願っても、現実とのギャップに何度も心が折れました。

ーーママパパのリアルな悩み

「子どもと食」についての悩みを、子育てと仕事を両立する保護者の方にも聞いてみました。

「子どもが『お腹が空いていない』と言って食べないことに悩みました。無理に食べさせることで、子どもも自分もストレスに感じていたと思います」(30代・2児の母)
「完璧に両立できないことに悩み、食事の準備が精神的ストレスになっていた時期がありました」(30代・1児の母)
「毎日余裕がなく、特に朝は時間通りに食事を準備するのが難しいことが多い。手料理じゃないと食べないので工夫が必要で悩みました」(40代・2児の父)
「帰宅後の食事準備で、子どもと食べる時間が減ってしまうことが悩みでした。朝は子どもの機嫌が悪く、時間的余裕もなくストレスも」(30代・1児の母)
「下の子の好き嫌いが激しいことに悩んでいました」(30代・2児の父)

ストレスを減らす工夫で、食卓が変わった

そんな我が家でも、いくつかの工夫を取り入れたことで、ストレスが少しずつ減っていきました。

✔︎ 保育園/学校と同じ味で安心を

まず始めたのは、保育園や学校で「完食できた」「おかわりした」と報告があったメニューを先生に確認し、家庭でも同じように作ってみることでした。家庭での味付けや見た目を似せることで、子どもが安心して食べられるように。

✔︎ メニューを子どもと一緒に決める

本屋さんで子どもと一緒に料理本を選ぶのもおすすめです。「ここから食べたいものを教えてね」と伝えると、子どもが自分で選んだメニューには興味を示し、積極的に食べるようになりました。

✔︎ 3色戦隊方式で栄養バランス

栄養バランスについては、細かく考えすぎず、炭水化物・たんぱく質・ビタミンをそれぞれ1種類ずつ摂れればOKという「3色戦隊方式(キレンジャー=炭水化物、アカレンジャー=たんぱく質、ミドレンジャー=ビタミン)」で管理。子どもにも「今日はこの中から、ひとつずつ選んで食べてみようね」と伝えることで、遊び感覚で取り組めました。

✔︎ 週末の作り置きでプチバイキング

平日の余裕がない日々に備えて、週末に作り置きをします。作り置きした日は、全てのおかずを並べて “プチバイキング” 夕食に。「自分で選んで完食する」成功体験が、食への意欲にもつながります。自分で準備できない週は、家事代行サービスを使うのもひとつの手。

✔︎ 食事場所に変化をつける

いつもの食卓だけでなく、公園でお弁当を食べたり、旅行先で地場の料理を味わったり、ベランダでピクニック風に食べたりすることで、食事へのワクワク感も増やすようにしています。場所が変わるだけで、子どもの気持ちもガラッと変わり、食が進むことも多いんです。

一番大切だったのは、「ちゃんとしなきゃ」を手放すこと

私にとって最大の転機は、「ちゃんと食べさせなきゃ」「手作りしなきゃ」という思い込みを捨てたことでした。

肉や魚を食べなくても、大豆や卵でOK。
冷凍食品やレトルト食品、テイクアウトも立派な選択肢。

毎日がんばらなくたって、いいんです。一番大切なのは「お母さん・お父さんが笑顔でいられること」。私がイライラしていると、子どもはすぐに察します。

食卓は、子どもだけでなく「私にとっても心地よい場所」であるべきなのだと気づきました。

「自分の食事を後回しにしてしまいがちでしたが、今はどんなに忙しくても、子どもだけでなく親も同じ時間に一緒に食事をするようにしています。

食事は、子どもとの大切なコミュニケーションの時間ですし、自分自身のためにも必要な時間だと感じています」(30代・2児の母)
「食べることに集中してもらう工夫が我が家には合っていました。食事はみんなで “いただきます!” と元気に挨拶し、大人はスマホは見ずに子どもとの時間に集中するように意識しています」(30代・2児の母)
「手作りのおかずをたくさん揃えることよりも、外食や中食に頼っても心に余裕を持って子どもとの食事に時間を割いて会話をしたりする方が子どもも自分もストレスが軽減すると気づきました。

また朝は子どもの機嫌が悪くこちらも時間的な余裕がないことから食事の時間がストレスになっていたので、簡単な朝食を和食と洋食で選べるようにし、子どもに決めさせることで(ヨーグルトとパンかおにぎりとお味噌汁)お互いのストレスがなくなったように感じます」(30代・1児の母)
「好き嫌いが激しいことに悩んでいましたが、そもそも好きなものでもいいからいっぱい食べてくれたらいいかっていうメンタルになって、ストレスが軽減しました。」(30代・2児の父)
「子どもがレトルトを食べないので、甘口ルーで野菜を煮込んで手作りカレーを作っています。手間はかかりますが、小分け冷凍し食事の際に温めることで負担を軽くしています。“パパのごはんおいしい!”と言ってくれるのが本当に嬉しい」(40代・2児の父)

今日の一食が、未来の宝物になる

家族で過ごす食事の記憶は、大人になっても忘れないもの。

毎日一緒に夕食を食べられなくても、おやつの時間や寝る前のひとときでも、一緒に食べる経験は作れますし、「今日は遅くなっちゃったけど、冷蔵庫に○○入れてあるよ」そんなメッセージを添えるだけでも、子どもにとっては “つながりを感じられる大切な瞬間” になります。

食卓とは、食べることを通して、学び・育ち・つながる場所です。理想どおりにいかなくても大丈夫。楽しく、無理なく、ときには手を抜きながら、今日の一食が家族の笑顔につながるように。

今日の一食が、子どもの未来の「心の支え」になる。そう信じて、私はこれからも食卓に向き合っていきます。



【参考文献】

※1 第3部 食育推進施策の目標と現状に関する評価|農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/r4/r4_h/book/part3/b3_c0_0_00.html

※2 4 食育の推進に役立つエビデンス(根拠)|農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/evidence/attach/pdf/index-27.pdf

(2025/09/08参照)

プロフィール
食生活アドバイザー 幼児食アドバイザー
鎌上織愛

食生活アドバイザー・幼児食アドバイザーの資格を有し、ライターとして多くの食育・子育て関連の情報発信に携わるほか、自身が経営する「つばたまカフェ」を通して子どもの食育や地産地消、インバウンドの活性化に力を入れている。一児の母として日々の食卓と向き合いながら、家庭でできる食育や、親子で楽しむ食卓の工夫などを提案。食の楽しさやつながりを伝える活動を続けている。

この記事のキーワード

関連記事

CONCEPT famimogについて familyでモグモグ。

『 famimog(ファミモグ) 』は、
仕事や子育てに忙しいパパ・ママの
笑顔あふれる毎日を応援するプロジェクトです。

日々のごはんづくりや食にまつわるお困りごとを
専門家のアドバイスや製品アイデアで
やさしく解決。

毎日の暮らしを“もっとラクに、もっと楽しく”する
ヒントをお届けします。

今日のごはんが、
明日の笑顔につながりますように。

ホーム食でつなぐ、人と笑顔を。famimog(ファミモグ)子どもと食卓を囲めるのはあと何回?“限られた時間”を楽しむために私がしていること