肉様の食感をもつ低たんぱくミート(肉様食品)の開発

ハウス食品グルーブでは、食事に対して何らかの調整が必要な方に向けた食品“ケアフード”の研究開発に取り組んでいます。『やさしくラクケア』シリーズはハウスギャバンのケアフードブランドです。

『やさしくラクケア 低たんぱくミート』ミンチ

図1:『やさしくラクケア 低たんぱくミート(ミンチ状肉様食品)乾燥タイプ』

『やさしくラクケア 低たんぱくミート(ミンチ状肉様食品)乾燥タイプ』は、ケアフードの一つである“たんぱく調整食”として開発された肉様食品です(図1)。食物繊維とコンニャクイモ抽出物を主成分に、肉不使用でもまるでひき肉のような食感を実現しました。おいしく満足度の高いたんぱく調整食のサポートをしています。

※本製品は、消費者庁許可の特別用途食品ではありません。

これまでのたんぱく調整食

たんぱく質は、肉・魚などの主菜やごはん・パンなどの主食に多く含まれます。たんぱく質の制限が必要な方の食事ではこれらの量を減らし、その分のエネルギーを油で補うことが多く、ボリュームが少なく脂っぽい食事になりがちでした。

このようなお悩みから「低たんぱくごはん」は多く利用されていますが、さらにたんぱく質を多く含む「肉・魚」に代わる食品はありませんでした。

肉・魚に代わるようなおいしい低たんぱく食品があれば、食事全体のボリュームが保たれ、お客様にとってより魅力的になるのではないかと『低たんぱくミート(肉様食品)』が開発されました。

食物繊維とコンニャクイモ抽出物で肉の食感を再現

図2:『低たんぱくミート(肉様食品)』の構造と構成成分の役割
図2:『低たんぱくミート(肉様食品)』の構造と構成成分の役割

まず、肉を構成する筋肉はたんぱく質の繊維の集まりであるため、筋繊維の構造を食物繊維で再現することを考えました。また、食物繊維を集めて肉らしい弾力を再現するのに、これまで培ったゲル化技術が活用できるのではないかと考えました(図2)。

様々な食物繊維とゲル化剤の組合せを試行錯誤した結果、セルロースとコンニャクイモ抽出物によって、肉らしい食感が得られることが分かりました。さらに、デンプンを加え、肉のジューシー感を達成しました。

肉様構造とテクスチャー

図3:鶏肉ミンチと『低たんぱくミート(肉様食品)冷凍タイプ』の電子顕微鏡写真
図3:鶏肉ミンチと『低たんぱくミート(肉様食品)冷凍タイプ』の電子顕微鏡写真

電子顕微鏡で構造を観察したところ、細長い繊維がコンニャクイモ抽出物で覆われ、デンプン・油脂が分散していることが確認できました。不均質で多孔質の構造があり、加熱調理した肉と同じように繊維が密着している部分も観察されました(図3)。

図4:テクスチャー測定
図4:テクスチャー測定

食感を示すテクスチャーを測定したところ低たんぱくミート(肉様食品)冷凍タイプをかみしめた食感にあたる波形が鶏ひき肉と似ていることが分かりました(図4)。その上、加熱をしても構造が変わらないためパサパサになりません。

実際にたんぱく質の制限が必要な方に数週間、肉や魚の代わりに召し上がっていただいたところ、「おいしく食べ続けられた」「調理がしやすく栄養管理がしやすい」との評価をいただきました。

さらに、食物繊維を豊富に含むことや、おいしさ、使い勝手の良さなどの面から、たんぱく質の制限が必要な方に限らず、多くの方々の食事管理にご利用いただいています。

研究成果の外部発表(上記、肉様構造とテクスチャー、テクスチャー測定)

  1. 日本食品工学会誌 Vol.13 No.3 p.113-116 (2012年) 肉様の食感を有する食品組成物(低たんぱくミート)の開発:有馬香苗,塚本祐子,富田康裕,伊藤章一
  2. 日本食品工学会第12回年次大会(2011年)肉様の食感を有する食品組成物の開発:有馬香苗、塚本祐子、富田康裕、伊藤章一  ポスター賞受賞。
  3. 日本缶詰協会第60回技術大会(2011年)肉様食感を有する食品組成物の開発:富田康裕