食物アレルギーについて、ハウス食品グループがお伝えしたいこと ひとつのお鍋で、家族をひとつに。

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赤城智美さんコラム

食物アレルギーについて、赤城さんご自身の経験をもとにさまざまなエピソードをご紹介します。

コラム Vol.39
一緒の時間を
楽しむこと

子どもが食物アレルギーと診断されると、アレルゲン管理を徹底するためのあらゆることに心血を注ぐようになります。食物アレルギーを経験したことのない周りの人々から「食事作りが大変でしょう?」と言われることも多くなります。
自分自身が経験した子育てではどうだったのだろうと振り返ってみると、食事作りは「チャレンジ」の連続で大変だと思う間もなく、とにかくたくさんの時間を費やしていたことしか思い出せません。
「あれはしんどかったなあ」と思い出すのは、周りの人との価値観の違いを乗り越えて、どうやったら子どもが安全に過ごせるか、そのことに腐心していた日々のことでした。

我が子は幼児の時、乳成分を含むものを食べると嘔吐、下痢、呼吸困難を起こすため、牛乳を飲むことができませんでした。そのためお茶を持参したいと保育園に申し出たのですが、保育園からは「牛乳は飲まなくてもいいので白い飲み物を持参してください」と言われました。他の子どもたちが牛乳を飲む時間に1人だけお茶を飲むのは本人も辛いだろうから、違いが分からないようにしたいという保育園の『配慮』による回答のようでした。
当時、豆乳は今ほど普及しておらず、私はアレルギー用の粉ミルクを持参する方法しか思い浮かびませんでした。ただ、それはとても高価だったためできれば避けたいと保育園に懇願し「お茶がだめならお白湯を飲ませてほしい」と何度も交渉しました。白い飲み物は牛乳と見分けがつかず誤飲の原因にもなるので、我が子にとっては危険なものでもあります。保育園がどうしても納得してくれなかった時に「白い飲み物を誤飲してアレルギーを発症した時、対処しなければならないのは先生たちなのでご迷惑をかけたくありません」と言うと、ようやく「似たものは危ない」「周りの子の牛乳を欲しがらないのならお茶でもいい」という判断が出て一件落着しました。
「誤飲したらあなたが大変になる」という言葉は先生をむやみに脅かすようで、本当は言いたくありませんでした。でも「一人ひとりが違っていても、一緒にご飯を食べたら楽しいという経験が大事、保育園ってそういう場所ですよね」という説得はインパクトに欠けていたようで、やむを得ませんでした。

NPO法人アトピッ子地球の子ネットワークで実施した「食物アレルギーの赤ちゃん応援プロジェクト」のために、昨年は図らずも100人近い赤ちゃんの粉ミルク事情をお聞きすることになりました。1才半~卒園までの年齢で粉ミルクの支援を希望するほとんどの人が、さまざまな地域の保育園から牛乳の代わりにアレルギー用粉ミルクを持参するよう指導されていました。
私たちの電話相談には、以前は「保育園で牛乳の代わりに豆乳を飲むよう指導されたが、大豆たんぱく質が凝縮されたような飲み物を定期的に飲ませることには抵抗がある」「乳成分と大豆のアレルギーなので、牛乳も豆乳も飲めない。保育園はなぜ白い飲み物を強要するのか」といった保護者からの切実な声が寄せられていました。最近そうした相談が減ってきていると感じていたので、私は「白い飲み物」にこだわる風潮は解決されてきたのではないかと誤解していました。

「一緒にご飯を食べることって楽しいね」という保育や教育のために、みんなと少しだけ違うところがある子どもにも「みんなと同じ」を求めてしまうのは、とても残念なことだと思います。「みんな少しずつ違っているけれど、みんなで食べると楽しいね」と言えるような保育園であってほしい。このささやかな違いが伝わるでしょうか。

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